Setouchi kitchen、さいたどう、などの飲食店を運営している株式会社寶田堂の関社長へインタビューを行いました。コロナウイルスの影響によって飲食事業の売上が大きく落ち込む中、現状を打開するために事業再構築補助金を活用した新規事業計画を立てたいというご相談を受けました。今回のインタビューでは新規事業に乗り出すきっかけや、実際に当社のサービスをご利用いただいた時のお話を伺いました。
うどん県であえてラーメンで勝負する理由
伊藤:今回の新規事業はどのような内容ですか?
関さん:今までは都内にイタリアン、居酒屋といった夜の集客をメインにした業態を中心に営業を行っていましたが、今回はラーメンと餃子をメインにした食事を中心の業態です。ご承知の通りコロナウイルスの影響が大きく、アルコール中心ではない業態を持つことの必要性を感じました。
伊藤:食事中心の業態への挑戦は今回が初めてですか?
関さん:はい、そうですね。メニューの中に麺類や食事メニューがあることはありますが、業態としては初めてです。この1~2年で外食に対する利用シーンは大きく変わりましたので、当社も変化する必要がありました。特に、テイクアウトやミールキットの様な外食以外のニーズが伸びていることを感じました。今回の業態では、生餃子などの店外売上を上手に取り入れることを目指しています。ですので、入り口部分にもテイクアウト専用の窓口を確保することで、入店しなくても餃子などを購入することが可能です。
伊藤:確かに中食や内食の市場は伸びていますよね。今回の出店場所は都内ではなく香川県でしたね?
関さん:そうですね、もともと私の地元ということもあるのですが、2020年4月頃から香川県にある古民家を再生させた飲食店のプロジェクトに関わっていたことから、首都圏ではない地方で飲食事業を行うことに可能性を感じていました。また、「香川県=うどん県」というイメージを皆さんお持ちだと思います。実際にうどん店の数は確かに多いのですが、ラーメンに対する需要がないわけではないんですよね。
伊藤:確かにうどん県のイメージはありますが、ラーメン店の利用実態はどのような状況なのでしょうか?
関さん:もちろん、当社が出店する観音寺市にもチェーン店や地場で営業しているラーメン店はあります。ただ、潜在的な需要に対してラーメン店の供給が足りていないんじゃないのか?と感じたことがあります。香川県のあるうどん屋さんに昼時に入った時に、店内の大半のお客さんがうどん屋でラーメンを食べている光景を目の当たりにしました。うどん屋でラーメンですよ(笑)首都圏ではありえない光景かと思いますが、香川県ではあり得るんですよね。
伊藤:それはすごい光景ですね(笑)セントラルキッチンを併設させているのは、今後の店舗展開も視野に入れているのでしょうか?
関さん:はい、まずは1店舗目を軌道に乗せることと、店外売上を確保することを目標にしていますが、今後の店舗展開を視野にいれてセントラルキッチンを併設させています。10年以内に四国エリアで10店舗を今回立ち上げたセントラルキッチンで賄えれば良いと考えています。
伊藤:セントラルキッチンを稼働させる上での課題はありますか?
関さん:飲食業と違って食品製造業になりますので、シビアな生産計画が必要になると考えています。1つの製品を製造するのにどの程度の時間や人員が必要なのかという点についても、これから標準作業時間を決めながら手探りで行っていきますので、その点についてはまだまだ課題がありますね。
事業計画書を作ることで共感を生む
伊藤:今回、事業再構築補助金の申請に関するご相談を受けました。きっかけはどのようなものだったのでしょうか?
関さん:コロナウイルスの影響で新しい事業構想を温めていたのですが、セントラルキッチンの併設や香川県への新規出店などリスクが大きい事業になると考えていました。ちょうど構想を練っている時に補助金の存在を知ったのが最初のきっかけです。それから色々と調べていると、申請を自社のみで行うのは難しいのではないかと考えたことから依頼しました。
伊藤:今回の支援では事業計画書の確認と添削のみを行いました。事業計画書は自社で作成したいということは最初のお打合せからお話してされていましたね。
関さん:そうですね、幸いなことに社内に資料作成が得意な人材がいたということもありましたが、やはり自社の事業計画ですので自分たちで作り上げたいという思いがありました。ただ、自分たちだけでは採択されるかという不安もありましたので、今回ご相談させて頂きました。
伊藤:ありがとうございます。サポートを受けた感想を忌憚なくお聞かせください。
関さん:採択という結果が出たことはもちろんですが、フレキシブルに対応して頂けたことが良かったです。こちらの要望に合わせてサービス設計をしていただいたことは有難かったです。実際の計画書作成は当社で行っていますが、外部の方の視点が入ることで伝え漏れている内容にも気づくことができました。採択に向けたブラッシュアップの段階では、審査項目に記載のある観点から、求められている内容を記載できているかどうかを精査できた点は良かったと思います。
また、酒販店に勤務されていたので飲食業界のことをよく理解してくれていたので、非常に話が早かったです。アルコールメインではない業態が行っている取り組みなどについては、私たちも気付きがありました。
伊藤:結果が出た点についてはホッとしております。事業計画を作ることで感じたメリットはありますか?
関さん:一番良かった点は金融機関から共感を得られたことです。「よく検討されている」というコメントを頂きましたし、金融機関に限らずに対外的に資料を見せることで今後の方向性をわかりやすく伝えることができています。事業計画を立てる最初の段階では、自社の現状分析を行いました。強みの分析や普段は目を向けたくない弱みについても見つめなおすことで、一度立ち止まって冷静に分析することができました。市場調査ではお客様が何を求めているのかを把握することができましたし、競合店のベンチマークをすることで勝負するポイントを絞り、販売価格などの設定をすることができました。これらの取り組みによって収益計画ができていますので、必然的にわかりやすい事業計画書になったのだと思います。
伊藤:最後に今後の展望についてお聞かせ下さい。
関さん:今回取り組む事業は、首都圏から地方へのマーケットチェンジ、アルコール業態依存からの脱却がポイントになっています。事業再構築という観点では大胆な転換が評価されたポイントだと感じていますが、地方のマーケットでは固定費を低く抑えることやオーバーストアな市場から抜け出せるというメリットがあります。競争の低さに甘んじるという意味ではありませんが、今後は自社の強みと市場特性を踏まえた上での出店計画を考えています。また、宴会などの大型の予約もしばらくは戻りにくいと思いますので、アルコール以外の売上や店舗外の売上を構築させることに注力していきたいと考えています。
今回は株式会社寶田堂の関社長にお話をお伺いしました。変化する環境に対して主体的に挑戦していく姿勢は、どのような業種でも必要なことであり、お話の中で多くの気づきを得ることができました。ご協力ありがとうございました。