八千代市内でフリースクール「まなびかふぇ」を運営している、森さんにインタビューを行いました。学習塾の運営を行う中で、2024年から新規事業としてフリースクールの運営を開始されました。2023年に商工会議所経由でご相談を頂き、新規事業計画を経営革新計画として承認を受けました。今回は、フリースクール開業に関するお話や新規事業立ち上げに関するポイントについてお話を伺いました。
伊藤:最初のご相談は経営革新計画を策定したいということでしたね。純粋に経営革新の認定が目的というのは結構珍しいパターンです(笑)
森さん:そうだったんですね(笑)
伊藤:多くの方は融資・補助金などの目的があって、そのために申請したいというケースです。
森さん:そういう意味では、当社のケースも新規事業を具体化させたいという目的はありました。その一方で、開業して10年という節目の年ということもあったので、自社の事業を客観的に見直したいという思いがありました。また、相談した当時は複数店舗の運営を行っていたのですが、収益化が難しい店舗もありましたのでその点についてもご相談させて頂きました。
伊藤:学習塾とフリースクールは関連性もありそうですが、どのようなきっかけで着想されたのでしょうか?
森さん:学習塾の生徒からの話がきっかけでした。ある生徒との何気ない世間話や面談などをする時に、塾には通っているが学校には行っていないという話が出てきました。はじめは少し戸惑ったのですが、色々と調べたり話を聞いてみたりしてみると決して珍しいことではないんだと思うようになりました。
伊藤:確かに不登校自体は耳にすることもありますね。
森さん:困っているのであれば当社が提供しているサービスの延長線上で、何か力になりたいという思いがありました。フリースクールの運営方法を考えている時に、昼間の時間を活用できれば学習塾のアイドルタイムである9時~15時までを有効活用できることにも気づきました。実際にうまく運営することができればwin-winの関係になるのではないかと。
伊藤:社会課題も解決できれば三方良しですね!フリースクールの特徴はどのような点ですか?
森さん:室内の雰囲気としては安らぎを提供できるような空間づくりを意識しています。小学生は親御さんの学習に対する意識や要望はそこまで強くないのでが、担当者との関わりや社会との関わり持って頂けるよう心掛けながら、持参した本を一緒に読むなど、生徒がしたいことを行うようにしています。絵を描くこともあったりするので、学童保育やちょっとした習い事のような感覚で使って頂くことが可能です。
伊藤:学習を希望する生徒は学習をすることもできるのでしょうか?
森さん:はい、e-ラーニングの様に個人で学習をすることが可能です。今のところ、中学生の方が学習に対する需要は高いように感じています。また、まなびかふぇでは地域にある中学校と連携して出席認定を取得することもができるようになっています。
伊藤:出席認定があるのはありがたいですね。自治体との連携が必要になるのでしょうか?
森さん:開業前も含めると八千代市教育委員会とは何度も打ち合わせを行いました。出席認定については、必要な要件があまり細かく定められていないということがわかりました。そのため、こちらでもどのような書類などを用意すればよいかという点については、本当に手探りの状態で進めていくことになりました。学区内の中学校に訪問して事業内容の説明を行い、当校に通ってきている生徒さん在籍校の全ての学校からは出席認定の許可を受けることができました。その時には、事前に作成していた経営革新計画がとても役に立ちました。
伊藤:それは良かったです。千葉県からの承認を受けているということもプラスに作用したのでしょうか?
森さん:経営革新計画の承認を千葉県から受けているからプラスに作用したという明確なフィードバックはありませんでしたが、学校や教育委員会に対しては良い影響があったのではないかと感じております。何よりもこれから新しく取り組む内容を文章や図などにして具体的にしていたため、プレゼンを行う場面でスラスラと伝えることができました。自社の分析や今後の取り組み内容について、じっくりと考えたからこそだと思います。計画策定を通して自分自身の思考を整理することができましたし、作成した事業計画書は融資や補助金、ビジネスコンテストなどの申請にも活用できるので使い勝手が良いと感じています。
伊藤:確かに事業計画書は一度作ってしまえば使い道は色々とありますよね。我々の様な専門家や支援機関にはどのようなサポートを期待しますか?
森さん:新規事業として無事にスタートを切れましたが、課題はまだまだ多くあります。例を挙げると、当事業の認知度を高めるための取り組みが不足しています。商工会議所が実施しているまちゼミなど、露出できる機会があれば積極的に参加していますが、戦略的にプロモーションをしていく必要があると感じています。また、資金調達についても今後必要になる可能性がありますので、それらの点についてはサポートをして頂けると助かります。更に新たな戦略立案に関する企画/マーケティングや売上計画/収支計画などに対しても、専門家として客観的に意見を頂けることがとても有難いです。
伊藤:目標に向かって戦略的に動くことはとても大事ですね。最後に今後の展開についてお聞かせください。
森さん:まずはしっかりとフリースクールとしての認知度を向上させて稼働率を安定させることが目標です。中長期的にはフリースクールだけではなく、大人も含めたサードプレイスを提供する事業に取り組んでいきたいと考えています。そのためには、法人化を行って事業の基盤を固めていく予定です。
伊藤:森さん、ありがとうございました。今後の展開が楽しみですね。心より期待しております。