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子育てから気づいた「ポジティブフィードバック」で部下を育てる手法

 子育てと部下育成、一見異なるように思えるこの二つの中に似ている点があると気づきました。研修の受講生から相談を受け、子どもの行動変容で効果を感じた「ポジティブフィードバック」を職場に応用したところ、驚くほどの変化があったのです。

気づきは子育ての現場から

 わが家の小学生の息子は片付けが苦手でした。というか、今でも苦手です(笑)何度注意しても改善せず、親子でイライラする日々。転機は「ポジティブフィードバック」との出会いでした。悪い行動を叱るより、良い行動を見つけて認める方が効果的だと学びました。

 例えば、床に放り投げていたランドセルをソファに置いたとき「ちゃんと置いたね、ありがとう」と伝えると、次第に自分から「今日はちゃんと置いたよ」と報告してくるように。さらに、一連の行動を細分化して認めることで、息子の行動は少しずつ変わっていきました。冒頭で紹介したように、まだまだ片付けは苦手ですが以前と比較すると大きく変化しました。

研修での受講者からの相談

 ポジティブフィードバックを実践する様になってからしばらくしたある時、マネジメント研修の講師を務めていたある企業での研修後、一人の中堅マネージャーBさんからこのような相談を受けました。

「新人の指導がうまくいかなくて…。何度注意しても改善せず、お互いストレスが溜まっています」

 Bさんの部下であるAさんは、提出物の締め切りに遅れがちで内容も不十分なことが多く、Bさんはどうフィードバックすべきか悩んでいました。

 「実は私も似た経験があります。ただし、職場ではなく子育てで」と切り出し、息子の片付け問題と「ポジティブフィードバック」での変化を話しました。Bさんは少し驚いた表情を見せながらも、「子育てと部下育成、共通点があるかもしれませんね。試してみます」と前向きな返事をくれました。

「観察」から始める部下育成のアドバイス

 Bさんに最初に提案したのは「観察」です。「まずはAさんの仕事ぶりを細かく見てみてください。できていないことだけでなく、小さな良い点も見つけてみましょう」とアドバイスしました。

 2週間後、Bさんから報告がありました。Aさんの提出物は遅れたものの、データの整理方法に独自の工夫が見られたそうです。「このデータの整理方法は見やすくていいね。自分で考えたの?」と伝えたところ、Aさんは嬉しそうな表情を見せたとのこと。

 「今まで気づかなかった部下の良さを見つけられました。指摘するだけでなく認めることの大切さを実感しています」とBさんは話していました。

細分化されたフィードバックの効果を実感

 次のフォロー研修で会った際にBさんに提案したのは、業務プロセスを細かく分けてフィードバックする方法です。例えば資料作成を依頼したときでは、

1.指示を聞いてメモを取った → 「きちんとメモしてくれて助かる」

2.質問が的確だった → 「その質問は重要なポイントだね」

3.作業に取り掛かるのが早かった → 「すぐに行動してくれて感謝」

4.一部でも良くできていた → 「この部分の分析は深くていいね」

 1ヶ月後、Bさんから興奮気味のメールが届きました。「段階的に認めていくことで、Aさんが次第に自信を持ち始めたようです。以前より質問も増え、『もっと良くしたい』という意欲が感じられるようになりました」

受講生からの嬉しい報告

 特に効果的だったのは、完璧な結果ではなく「プロセスの改善」を認めることでした。次の研修で再会したBさんは、「以前は提出物の不備だけに目が行きがちでしたが、『前回より構成が良くなっている』『データの裏付けを取る姿勢が良い』など、成長の過程を評価するようにしました」と報告してくれました。

 驚いたことに、この実践から3ヶ月後、Aさんは自ら「次の企画書、早めに下書きを見てもらえますか」とBさんに相談するようになったそうです。Bさんは目を輝かせて「完成度を上げようという主体性が生まれました。もう指示待ち社員ではなくなってきています」と語ってくれました。

研修で広がるポジティブフィードバックの輪

 この事例は、私が担当する研修の中でケーススタディとして取り上げるようになりました。Bさんもその当時を振り返ると自らの体験を語ってくれます。

 「マネージャーである私自身の『見る目』が変わったのが一番大きかった」とBさんは言います。「以前は『できていないこと』にばかり目が行きましたが、今は『できていること』に注目するようになりました。すると、チームメンバーの小さな努力や進化が見えるようになりました」

 当然、すべてが順調になったわけではありません。Aさんが締め切りに遅れることもあります。それでも、以前のようにチーム全体でストレスを抱える時間が減り、「それいいね」「ありがとう」という言葉が飛び交う職場になったとBさんは報告してくれました。

 研修の受講者からは「子育てと部下育成の共通点が意外だった」「明日から試してみたい」という声が多く寄せられています。私自身、子育ての体験が思わぬ形で支援に関わっている企業に良い影響を与えていることに、深い喜びを感じています。

 ポジティブフィードバックは単なる「褒め方テクニック」ではありません。それは相手の成長を信じ、可能性を見出す姿勢そのものです。子育てから学んだこの小さな気づきが、多くのチームマネジメントの質を変えていくきっかけになっていると実感しています。

 問題点を指摘するより、成長を見つけること。結果だけでなくプロセスを認めること。この視点の転換が、自律的に成長する人材とチームを育てる第一歩と言えそうです。

今回のアイキャッチ画像

 春休みに近所のショートコースを息子と回りました。もう、4月の事ですが。親父の影響で息子が始めた。のではなく、なぜか急に息子がゴルフを始めたついでに親父も始めるという、稀にみる珍しいパターンです(笑)子育てでは色々と大変なことも多いですが、ケンカしながら楽しくお互い成長したいけたら良いなと、常々感じております。

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