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客数増加に向けた考え方 - 9セグメント分析で考える飲食店の販売促進

 先日、ある飲食店経営者から集客に関する相談を受けました。ある店舗の客数が伸び悩んでおり、何らかの販売促進策を講じたいとのことでした。しかし、担当店長と経営者の間で、取り組むべき方向性について意見が分かれており、なかなか具体的な施策に着手できずにいる状況でした。

目指している方向性の違い

 詳しく話を聞いてみると、店長と経営者の見えている方向性の違いが明確になりました。店長は既存顧客の来店頻度向上に向けた取り組みを重視したいと考えていました。一方、経営者は新規顧客獲得に向けた対策を優先したいという考えを持っていました。どちらも客数増加という最終目標は同じなのですが、アプローチする方向性が異なっていました。

 このようなケースはよく発生しますが、重要な点は方向性を統一して納得性の高い取り組みを行うことです。

従来のターゲティング手法の限界

 飲食店の集客戦略を考える際、時間帯、利用シーン、年齢層などでターゲットを絞る方法がよく採用されます。例えば、「平日ランチタイムの30代会社員女性」や「週末ディナーの家族連れ」といった具合です。 確かにこれらの切り口は重要ですし支援の場面で活用することもありますが、今回のケースでは来店頻度向上と新規顧客獲得のどちらを優先すべきかという根本的な問題を解決するには不十分でした。同じ30代会社員女性でも、既にお店のファンになっている方と、まだお店を知らない方では、必要なアプローチが全く異なるからです。

9セグメント分析という新たな視点

 そこで今回は、9セグメント分析という別の視点からのアプローチを提案しました。9セグメント分析とは、顧客をブランドとの関係性によって9つのセグメントに分類するマーケティング手法です。

 この手法では、1つ目の軸に次回購買意向(ブランド選好度)、2つ目の軸に現在の購買頻度を設定し、さらに認知と購買経験の有無で大きく4つのエリアに分けて、合計9つのセグメントに分類します。

認知あり・購買経験ありエリア(既存顧客)】

セグメント1:積極ロイヤル者(高頻度・高意向)- お店の熱烈なファンで頻繁に利用

セグメント2:消極ロイヤル者(高頻度・低意向)- お店を気に入っているが、誰かに紹介するほどではない

セグメント3:積極一般利用者(低頻度・高意向)- 定期的に利用するが他店も併用

セグメント4:消極一般利用者(低頻度・低意向)- たまに利用する一般的な顧客

セグメント5:積極離反者(現在利用無し・高意向)- 過去によく利用していたが、現在の利用はない

セグメント6:消極離反者(現在利用無し・低意向)- 過去に利用したが満足度が低く現在は利用無し

認知あり・購買経験なしエリア(見込み顧客)】

セグメント7:積極認知・未購買者(認知・高意向)- お店を認知していて利用意向はあるが、何らかの理由で利用経験がない

セグメント8:消極認知・未購買者(認知・低意向)- お店を知っているがあまり関心が高くなく、利用経験もない

認知なし・購買経験なしエリア(潜在顧客)】

セグメント9:未認知者(完全に認知なし)- 最も遠い潜在顧客層

戦略の方向性を明確化

 この9セグメント分析を用いることで、店長と経営者の考えていた施策がどのセグメントを対象としているかが明確になりました。店長が重視していた来店頻度向上の取り組みは、主に「セグメント2(消極ロイヤル顧客)」や「セグメント4(消極一般顧客)」に対するアプローチでした。既にお店を利用している顧客の満足度を高め、より頻繁に来店してもらうことを目指していたのです。

 一方、経営者が考えていた新規顧客獲得策は、「セグメント7(積極認知・未購買顧客)」や「セグメント9(未認知顧客)」に向けたアプローチでした。まだお店を知らない潜在顧客に存在を知ってもらい、初回来店につなげることを重視していました。

目線合わせの効果

 9セグメント分析を用いて対象セグメントを可視化したことで、両者の考えが整理され、建設的な議論ができるようになりました。どちらのアプローチも客数増加には有効であり、問題は優先順位の設定にあることが分かりました。

 今回の支援では、具体的な手法についての細かい助言は控えました。なぜなら、実際の店舗運営や地域特性を最もよく理解しているのは経営者と現場スタッフだからです。私の役割は、戦略的な方向性を整理し、チーム全体の認識を統一することでした。

 9セグメント分析を活用して方向性のすり合わせを行った結果、以下のような効果が得られました。まず、店長と経営者の間での一体感が向上しました。それぞれの考えが否定されるのではなく、全体戦略の中での位置づけが明確になったことで、お互いの提案を尊重できるようになりました。

まとめ

 客数増加という目標は同じでも、そこに至るアプローチは複数存在します。重要なのは、自店舗の現状と顧客構成を正確に把握し、最も効果的なセグメントから優先的に取り組むことです。

 9セグメント分析のような戦略的フレームワークを活用することで、感覚的な議論から論理的な意思決定へとシフトできます。結果として、チーム全体の納得感と一体感を高めながら、より効果的な集客施策を実行できるようになります。

 飲食店経営において、集客は永続的な課題です。しかし、適切なフレームワークを用いて顧客を理解し、戦略的にアプローチすることで、効果を期待することができます。

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 今週の初めに丸沼高原まで子供たちとキャンプに出掛けて来ました。珍しい雲?虹?に出会ったり、満天の星空を見れたり、少しは夏休みっぽいことができました。下界の蒸し暑さとは無縁の涼しい場所で快適に過ごすことができましたが、ローカルの話によると年々暑くなってきているとのことでした。先週訪問した札幌も35°でしたし、このままだと夏は出歩けなくなってしまいますね。子供たちの遊び方もどんどん変化していきそうです。

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