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支援先企業の現場で感じた、現場主導の目標設定の力

数年前にはイメージできなかった光景

 先日、支援先企業の全社会議に参加させていただく機会がありました。そこで社員全員が前期の振り返りと翌期の目標について真剣に議論する姿を目にしました。部門のリーダーたちが主体となって売上や利益目標を設定し、それを全体で共有している様子を見て、企業としての成長をすごく実感しました。

 実は、こちらの企業を支援し始めた数年前には、私と経営者にはイメージできていませんでした。当時は創業間もない頃で、日々の業務をこなすのが精一杯。経営者が決めた目標を現場に伝えることで手一杯という状況でした。「現場から自発的に目標設定できたらいいよね」という話を経営者と話したこともありました。 それが今では、社員一人一人が各部門や会社全体のことを考え、自分たちの役割を主体的に捉えるようになっています。この変化を可能にしたのは、何よりも社員の皆さんの意識の高まりでした。

経営者の表情に現れた笑み

 この全社会議で最も印象的だったのは、経営者の表情でした。社員たちの発言を聞きながら、時折見せる満足そうな笑顔。「会社が本当に成長しているな」と実感されている様子が伝わってきました。

 特に心に残ったのは、ある部門のリーダーが「来期はこの数字を目指したいと思います。そのためには、こんな取り組みが必要だと考えています」と具体的な方法とセットで目標を提示した時の場面です。経営者は深くうなずきながら、「本当に成長しましたね」とつぶやかれていました。

なぜ現場主導が重要なのか

 もちろん、トップダウンで目標を設定することにもメリットはあります。全社的な視点で一貫性のある目標を設定でき、意思決定も迅速です。実際にこちらの企業でも創業当初はそのアプローチが必要でした。

 しかし、組織が成長するにつれて、現場が責任感を持って数字目標を作れるようになることの方が重要になってきます。その理由はシンプルです。当事者意識が生まれて、社員が自分たちで考えるようになるからです。

 上から与えられた目標と、自分たちで設定した目標では、取り組む姿勢が明らかに違います。会議でも、以前は「言われたことはやります」というスタンスだった社員が、「この目標を達成するために、私たちはこんなことを考えています」と積極的に発言するようになっていました。

目標設定で大切にしていること

 この企業では、現場主導の目標設定を進める上で、いくつかのことを大切にしているようでした。まず、前期や前月の振り返りを丁寧に行うこと。数字だけでなく、なぜその結果になったのかを皆で考える時間を十分に取っています。成功した取り組みも失敗した施策も、率直に話し合う文化が根付いていました。

 そして、目標を立てる時には必ず「どうやって達成するか」もセットで考えること。単なる数字の羅列ではなく、具体的なアクションプランまで含めて検討している様子が印象的でした。

 また、部門だけで完結するのではなく、全社での共有を大切にしていること。他部門の目標や取り組みを知ることで、連携の可能性や新しいアイデアが生まれているのを感じました。

組織文化の変化

 この変化の背景には、組織文化の変化もありました。これは、数年前に会社のビジョンと行動方針を明確に定めた事がきっかけになっています。さまざまな考え方を持つことは組織として強みにもなりますが、全体として目指す方針が統一されていないとバラバラになってしまうリスクもあります。そこで全社員が集まってビジョンを作る取り組みを実施しました。

 その結果、失敗を責めるのではなく学びに変える風土、社員同士が率直に意見を交わせる雰囲気、そして何より経営者が現場の声に真摯に耳を傾ける姿勢。これらが相まって、社員が主体的に考え行動できる環境が整っていました。

成長の原動力とは

 この企業の変化を見ていて感じるのは、会社の成長とは単に売上や利益が増えることだけではないと思いました。もちろん経営を続けていく上では数字もとても重要ですが、それ以上に社員一人一人が当事者意識を持って考え、行動するようになることは長期的に見た企業成長の原動力だと思います。

 数年前の創業当初と比べて、この会社は確実に成長した組織になっています。社員の表情も明るく、発言も積極的です。

今後への期待

 この企業の取り組みはこれからもやることが多くありますが、今後に向けた良い流れが見え始めています。これからはこの仕組みがさらに発展し、個人レベルでの目標設定にも現場主導のアプローチが広がっていくと感じています。

 経営者の方も「社員が自分で考えて動けるようになったことが、何よりも嬉しい」と話していました。組織づくりの本質を見事に体現している企業だと思います。企業支援をしていると様々な会社の成長過程を目にしますが、これほど社員の意識変化を実感できる機会はそう多くはありません。組織の成長は一朝一夕には実現できませんが、社員一人一人が主体的に考え行動する文化が根付いた時、その企業は確実に次のステージに進んでいるのだと、改めて感じた一日でした。

今回のアイキャッチ画像

 日曜日に日本ダービーが開催されました。勝利した馬に騎乗していた北村騎手のインタビューが印象的でした。自分自身も初のダービー制覇ですが、それよりも乗っていいた馬がダービー馬になれたことが嬉しいと。レースが終わった後に、他の騎手が祝福に集まってきているところも印象的でしたが、このような発言や考え方だからこそ周囲にも愛されているんだなと感じました。

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