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現場上がりの経営者が知っておきたい!収益管理のキホン

 事業を運営する上で、数字の管理は避けて通れない道です。しかし、これまでに中小企業診断士として500社以上の経営相談を受けている中で「数字に弱い」「財務管理が苦手」と感じている経営者や個人事業主の方に多くお会いしました。特に、現場上がりの方が急に経営に関する業務を任された、というケースでよく見かけます。そんな方々に向けて、数字管理のコツと、苦手意識を克服するための具体的な方法をご紹介します。

数字の管理が苦手だと感じている人の特徴

 数字管理が苦手だと感じている人には、いくつかの共通した行動の傾向がありました。

1. 結果の振り返り頻度が少ない

 数字と向き合うことそのものを面倒と感じていて、振り返ることに抵抗があるため売上や経費の確認を先延ばしにしている傾向があります。月次決算や確定申告の時期になって慌てて数字を確認するため、問題点の把握や対策が後手に回ってしまいます。

2. 細かい論点に焦点を当てすぎている

 数字に不安を感じると、些細な経費や小さな売上の変動に過剰に反応してしまう傾向があります。「先月より水道高熱費が2,000円増えた」といった細部にこだわりすぎて、全体像を見失ってしまうことがあります。

3. 収益ではなく売上高に目が行きがち

 「今月は売上が伸びた!」と喜んでいても、実際には経費も増えて収益は減少しているというケースは少なくありません。意図的に投資目的で経費をかけているのであれば問題ありませんが、意図せずに収益が減少しているのは問題です。売上高の数字だけに注目し、肝心の収益(利益)管理がおろそかになると、キャッシュフローの悪化や資金ショートなどの深刻な問題を引き起こすリスクがあります。

数字管理の苦手意識を克服する方法

1. 俯瞰的な視点で全体像を把握する

 細部にこだわる前に、まずは事業全体を俯瞰するための「鳥の目線」を持ちましょう。

【実践方法】

・月次で「売上」「粗利益」「営業利益」の3つの数字だけをチェックする習慣をつける

・前年同月比や前月比など、比較しやすい形で数字をグラフ化する

 確認する数字を絞ることはとても大事です。そして、まずは月に1回振り返ることから始めましょう。また、グラフ化することで視覚的に理解しやすくなるため、経営者だけではなく、現場の従業員との情報共有をしやすくする効果が期待できます。

2. 売上を部門や顧客属性などで切り分ける

 全体の売上だけ見ていても具体的な改善点が見えにくくなってしまいます。売上を分解して考えることで、好調などの部分に課題があるのかが明確になります。

【実践方法】

・商品・サービスのカテゴリー別に売上を分ける

・顧客タイプ別(新規/リピート、業種別など)に売上を分析する

・各部門の利益率を比較し、注力すべき分野を特定する

3. 大きい経費項目を重点的にチェックする

 はじめはすべての経費を細かくチェックする必要はありません。80:20の法則を活用し、全体の80%を占める主要な経費だけをチェックしましょう。

【実践方法】

・経費を金額順に並べ、上位3〜5項目に絞ってチェックする

・人件費、仕入れ、家賃など固定費の大きい項目の推移を重点的に管理する

・異常値(急に増えた経費)があった場合のみ詳細を確認する

 飲食店の支援を行うケースでは、大きな経費であるF(原価率)L(人件費)R(家賃)の3つに絞って計数管理を行うことが一般的です。その他の業種でも大きい経費や重要度の高い経費に絞って管理を行いましょう。

4. 振り返りの頻度を高め、習慣化する

 「数字を見るのが怖い」という心理的ハードルを下げるには、頻度を上げて慣れることが効果的です。回数を重ねるうちに、数字を客観的に見られるようになります。

【実践方法】

・毎週月曜の朝15分だけ、先週の数字をチェックする時間を設ける

・月次入力が完了した時点で前月の結果を30分程度で振り返る習慣をつける

 振り返りを行うためには、売上や仕入れ、経費などの入力を速やかに行うことが重要です。クラウドの会計ツールを活用することで、入力の手間を削減することも心がけましょう。

5. 売上だけでなく収益管理に重点を置く

 売上は事業の規模を示す指標ですが、最終的に重要なのは手元に残る利益です。売上と収益をセットで考える習慣をつけましょう。

【実践方法】

・「売上高営業利益率」など、収益性を示す比率を重視する

・商品・サービスごとの粗利率を把握し、収益性の高いものに注力する

 顧客ごとや提供している商品・サービスごとに利益額を把握すうすることが重要です。経営状況を把握することの基本は「分ける」ことから「わかる」ことに繋げることです。

数字管理で陥りがちな落とし穴と対策

1. 完璧主義に陥らない

 すべての数字を正確に把握しようとすると、挫折しやすくなります。80%の精度で全体像を把握することを目指しましょう。

2. 過去の数字に囚われすぎない

 過去の実績を振り返ることは重要ですが分析が完了した後は、先を見据えた数字の活用を心がけましょう。昨年より売上が下がったと嘆くよりも、来月どうすれば上げられるかを考えることが大切です。

数字を味方にするために

 数字管理の苦手意識を克服するには、難しく考えすぎないことが重要です。まずは自分なりのシンプルな管理方法を確立し、少しずつ習慣化していきましょう。毎日体重計に乗る習慣をつけると健康意識が高まるように、定期的に数字を確認する習慣をつけるだけで、事業の健全性は大きく改善します。

 売上だけでなく収益にも目を向けることで、持続可能な事業運営が可能になります。売上が倍になっても、利益がゼロであれば意味がありません。収益を中心に据えた数字管理こそ、事業の長期的な成長につながります。

今週のアイキャッチ画像

 自宅の近所にある昭和の森公園では、立派なこいのぼりが泳いでいました。この仕事を始める時に転居し、その当時1歳だった息子も今や小学6年生になりました。大きくなったもんです。そりゃ、親も歳をとるわけだ(笑)

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